「アルファブロガー・アワード2008」に受賞した記事を改めて読んで思ったこと
毎年「アルファブロガー・アワード」というのが発表されるんですが、皆さんごぞんじですか?
このQTVR Diaryでも使っているブログシステム「MovableType」開発元のシックス・アパートとブログマーケティング会社のアジャイルメディア・ネットワークが事務局を運営するアルファブロガー運営委員会が、質の高いブロガーの発掘を目的としたコンテストとして2004年から毎年発表してきた賞ですが、今年はブログに対する賞ではなく、特定のブログの記事に対して表彰していました。
■ アルファブロガー・アワード2008:ブログ記事大賞
http://alphabloggers.com/
今回、12の記事が受賞されていましたが、その中に、我々パノラマクリエイターもぜひ読んで欲しい記事があります。
実はこの記事、投稿直後に某方から教えて頂き、リアルタイムで読んでいました。
その時には「極論やなぁ」で片付けていたんですが、Googleのその後の暴挙っぷりを知る度に思い出しては読み返し、なんだか引き込まれるようになっている自分が居ます。
本日改めて読み返して、今までのGoogleに対する感情も含めて、自分が今思うことを書き連ねてみようと思います。
ボクは2009年の年頭に『パノラマクリエイター専業宣言』をしてしまった、愚かな輩です。
一応パノラマムービーの制作を生業とする日本でも数少ない人間...というよりボク独りでしょうか?(苦笑
けれど、宣言したからと言ってパノラマ撮影の仕事が舞い込んでくるわけでもなく(営業はガンガンしてるんですけどねぇ)、今までの流れで受けているウェブ制作の仕事をシコシコと続けているのが実情です。
しかし、宣言したからには営業をしなければならず、半ば啓蒙活動と化してはいますが、いろんなところに露出してはパノラマムービーの活用方法について、いろいろとアプローチしています。
去年の今頃だったら「パノラマムービーの制作をしてるんですけど」って言っても、頭の中でどんなコンテンツなのかが思い浮かばなかった人が大半で、しかも興味も無いから話をしてても良い反応が帰って来ませんでした。
それが昨年8月にココ日本でも、Googleのストリートビューサービスが開始されたことで、その状況が一変します。「あのグーグルのストリートビューみたいなの、作ってるんっすよ!」って言ったら、大概の人からは思い浮かべられるような反応が返って来て、話が非常にスムーズに通るようになっています。これだけでもボクらパノラマクリエイターにとっては恩恵が非常に大きく、出来ればこのまま続けて欲しいなぁと思っています。
ただこのサービス、開始するにあたっては余りにも配慮が足りなさすぎると思いませんか?
熟考されているとはとても思えません。むしろ"若気の至り"的な感覚で、勢いに任せて実行してしまった感がとても見えてしまいます。
この辺がGoogleらしさといえばそれまでなんですが、未だに自分たちのことを"ベンチャー企業"と思っているフシがありありと見えて、ちょっとイヤになってきます。自分たちの影響力を過小評価してるんでしょうか?だとしたら、早く足もとと周りを見比べて、責任のある行動を取って欲しいものです。
ところで、現在のこのサービスの問題点を挙げてみようと思います。
このベースになっているのは、一昨年アメリカでサービスが開始された直後にパノラマ関連のメーリングリストで噴出した批判意見です。
- パノラマコンテンツは、人が"見たくても見られない"場所を代理で写し取るものであり、その場所は厳選しなければならず、流し撮りで作るようなものではない。
- サービスの性質上、膨大な流し撮りによって作られるコンテンツは非常に質が悪く、影響力の大きいGoogleのサービスとしては余りにもお粗末である。これがパノラマムービーの品質であると解釈されると、我々のイメージが低下する。
- 我々は撮影に当たり非常にプライバシーに配慮した撮影を常々行っているが、本サービスは余りにも個人のプライバシーを"無いもの"として撮っており、これが標準化されると、我々の業務が非常にしづらくなる。
他にもいろいろあったんですが、ボクが心情として共感する意見だけを挙げてみました(逆にこんなのオカシイと仰る方も当然いらっしゃると思いますが、その辺は、またおいおいってことで)。
ボクらパノラマクリエイターはGoogleとは違い、非常にセンシティブにパノラマコンテンツを作ります。
それは即ち、主業務である全方位パノラマムービー用の撮影は前後左右(時には上下も)360°を撮影しますので、目標物の前面ではなく、左右や後ろに"たまたま居あわせる人"は、間違いなく撮影されている意識がない人達であり、そういう人達への配慮を、過剰なまでに意識します。
街角のスナップで通行人に声をかけてファッションチェックよろしく撮影するのは、その被撮影者の方に撮影許可の一筆を貰うだけで事足りますが、上記のようなパノラマ撮影ですと、周りに居る全ての人に許可をいただくようなことになり、余りにも非現実的な作業になります。従って人の顔が写らない角度で撮ったり、わざと人の顔がブレるように撮ったり、また人の顔に意識が行かないようなモチーフの作品にするなど、様々な手法を駆使して撮影することを心がけています。周りの人達に撮影してることを悟られないように撮影する自分自身の気配を極力消したり、その逆に周りを巻き込むような雰囲気を作ることも多く、両方ともなかなか習得しづらい技術ですが、パノラマクリエイターにとっては大切な"職能"ですね(笑
またそれだけ配慮をしてでも、その場所を撮りたいという"意志の強さ"も、非常に大切な部分です。
撮影者の視点のチョイスは、まさにパノラマムービーの"核"です。360°全方位写し取るパノラマムービーにとっては、前面の主要な被写体だけでなく後ろや左右、さらには上下までもが計算し尽くされた被写体になります。従ってパノラマ撮影にとっては、まさに"その場に居ること"こそが非常に重要な意味を持ちます。それだけ厳選したスポットで撮影するからこそ、出来うる限りキレイに撮ろうと様々な写真技術を駆使して"作品"に仕立てるワケです。
それだけにストリートビューのような、流し撮りの末に出来たコンテンツでは人を惹き付ける"何か"が存在するべくもなく、ただの地図情報としての意味しか持ちません。然し乍ら、このストリートビューというコンテンツは、ボクらが作るようなパノラマムービーと変わらない見かけを持ちます。これがとても問題になってきます。
見た目は同じなのです。上記で「ストリートビューみたいなことしてるんです」って軽く言っちゃってますが、「実は全く違うんですうよ」とも言いたいんですよね、本当は。この差異を理解してもらうのに、今は非常に時間がかかります。コンテンツとしても低俗で、しかも低い解像度のストリートビューのパノラマムービーがスタンダードと見られてしまうと、ボクらの仕事が非常にしにくくなってしまいます。今の日本人にとっては「パノラマムービー=ストリートビュー」っていう人がとっても多いんですから!それだけGoogleの影響力とやってしまったインパクトが大きすぎたんだと思います。
さらに日本人的な感覚の問題も、発生してますね。
塀の上から家の中が丸見えになるほど公道と建物との距離が近い日本の住宅事情では、ストリートビューで映し出されるコンテンツには、家の中まで写っているものが非常に多く、そうはいかないまでも表札やガレージに停めている車のナンバープレートが認識できたりもしています。
ただでさえ精神的対人距離の非常に大きい日本人は、このような映像を持つストリートビューに対しては、どっかの見知らぬ外国人が無断で玄関からズカズカ入って来たり、自宅の塀をよじ上って来るような感覚を持っているのだと思います。
ただ、この例でいくと、日本人の側も、そろそろ精神的な感覚を変えるべきなのかな、と思ったりもします。
今の日本の住宅に備わってる塀の高さは、日本人の平均身長から割り出したものだと、普通に推測できます。それはまさに日本の「風土」ですから、当たり前の数値だと言えるでしょう。
しかし「インターネット=国際化」と考えてみるとどうでしょうか?自分の家の周りに外国人がたくさん引っ越して来て、そのうちの半数以上の身長が190cmを越える人達ばかりだとすると...そう、普通に歩いていて、ちょっと横を見ると、彼らにとっては家の中が見えてしまうんです高さなんですよね、塀が。家の中を見られるのは、誰でも嫌だと思います。なので何らかの対処をしないといけないと思うのですが、その方法は幾つか考えられます。住んでいる人が塀の高さを変えるか、窓を透明ガラスから遮蔽できるもの(磨りガラス、カーテン、ブラインド、など)に変える方法、自治体や国が塀の高さを変える法律/条例の改正を行う方法、等々。しかしそこに「歩く人にしゃがんでもらう」という選択肢は無いと思います。少なくとも、暮らしてる外国人に周辺住人として「日本人はジロジロ周りを見ないんだから、あなた達も見習ってね」と"郷に入れば郷に従え"的感覚のお願いはできますが、それ以上は無理なんじゃないかな、さすがに。
国際化が進んだ地域での暮らしは、やはりそこに居る住人に対応していかなければならいのだと思います。そうしたら自然と自己防衛は働くと思うし、それを苦言は呈しても嫌が央にも従わなければならない状況ですから、どうしようもないワケです...残念ですが。
Googleの今の存在って「家の近所に住んでる、エエとこの大学にエエ歳してまだ通ってて、無鉄砲だけどやたら金もってて、けれどどこか憎めないヤツ」って感じなんじゃないかな、と。
なので近所のうるさ方(大概が保守的な爺さんやね)が、「もうちょっと大人の対応をしようよ」とか「勢いだけで物事進めんなよ」とか「1度目は許したるけど、2度目は無いで」とか言いたくなってしまうんだと思います。んで「ちょっとこんなんしたいんやけど、考えてくれへんか」とか「ウチでは金なくて出来へんから、そっちでやってんか」とか、お願いしたくなるんだと思います。
決して優等生じゃないんでしょうね、Google君は!(笑
けれど、もう、そうも言ってられる歳じゃないし、社会的影響力が余りにも大きく、その責務も重大だと認識して欲しいです。
2月の始めにこのブログでもご紹介した「第39回東京都情報公開・個人情報保護審議会」でのGoogleの答申(2/4と2/6の記事)では、Googleの杜撰な企画体制や自治体への配慮の無さが浮き彫りになりましたが、これからが大変です。あの膨大な量のデータを逐次修正するとなると、とんでもない時間と人的コストが発生しますが、それをGoogleのウェブ広告の収益で賄えるんでしょうか?しでかした勇み足の代償は高く付きますが、責任を持って対応して欲しいと思います。
それでも一方的にGoogleが悪いのではなく、各所では言われていますが、法整備がネット技術に追いついていないことは大きな要因として挙げられます。
Googleがやらなくても、もしかしたら誰かがストリートビューみたいなことはチャレンジしていたかもしれません(し、パノラマ業界ではことあるごとに、同じようなコンテンツサービスの話題が、半ば夢物語で上がって来ます)。
だからこそ、Googleには用意周到の上、慎重且つ大胆に行動に移して欲しかったです。
そして今後はもう少し配慮を持って、事を進めて欲しいと思います。
Googleは"一応は"世界中から精鋭が集まっているのでしょうし、やれば出来そうな人達なんですから。
ストリートビューの悪いイメージが払拭されさえすれば、ボクらパノラマクリエイターにとっては、非常に嬉しいことばかりです。
先ほども書きましたように、ストリートビューは「地図情報」です。そこには感情に訴える"何か"は存在せず、ただ淡々と情報が掲載されているに過ぎません。
そのコンテンツと、ボクらが作るような"一点もの"のパノラマコンテンツは、全く別モノで、棲み分けも完璧にできると思っています。
いろんな意味でGoogleには期待するところが大きいので、その期待にきちんと答えられるだけのスケジュールを早く立て、ボクらを安心させて欲しいものです。
頑張って下さい>Google
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( 2009年2月26日 08:23 )
二宮さん
はじめまして。higuchi.com の樋口でございます。コメントをいただき、またわざわざ「ご自宅」で、専門家の視点からの掘り下げたご意見をお書きいただいてありがとうございます。恥ずかしながら、パノラマムービーの業界があるということも知らなかったのですが、たいへん勉強になりました。
また、アワード授賞後の記事、
http://www.higuchi.com/item/325
にも書きましたが、もともといつものノリで内輪の自分のギョーカイの人向けに書いたつもりの記事が予想をはるかに超えた反響を得てしまい、その中でも「おまえの考え方が世の中に合ってないんだ(だから黙れ)」的な短絡的に吐き捨てられたコメントなどに少々辟易していたものですから、このように深く正面から受け止めていただけたこと自体を、純粋にうれしく思います。くりかえし、ありがとうございます。
私の考えの根っこにあるのは
> パノラマコンテンツは、人が"見たくても見られない"場所を代理で写し取るものであり、
> その場所は厳選しなければならず、流し撮りで作るようなものではない。
というものに近いかな、と思います。生活者が生活を営む上で無自覚に実世界に遺している生活の「あと」は、公開を前提としていない情報なので、それをデジタルの機械情報にして一方的に公開するからには、相当の配慮と注意をもって切り出さなければならないと思っているのですが、そこをあえて意図的に無視する姿勢が無神経に思えてしようがなかったのです。
いずれにせよ、私もストリートビューをやめろ、とかそういうことは思っていませんし、書いてもいません。まじめに生活者/利用者と向き合って、きちんと配慮して、受け容れられるものにして欲しいと願っています。
ということで、コメントのお礼まで。
おじゃましました。
( 2009年2月26日 12:33 )
>樋口理さん江
うわぁ、ご本人様ぁ....お越しいただき、恐縮至極にございます。
拙ブログをご拝読いただき、ありがとうございます。
>パノラマムービーの業界があるということも知らなかったのですが、
そりゃぁ無理も無い...世界的にはあっても、ココ日本には無きに等しく、まさに今、業界を“創っている”真っ最中ですから!
改めて、ストリートビューに対して弁護させて下さい。
世界中で人間が入り込むことが出来るあらゆる場所でパノラマ撮影し、それを繋げてもう一つの世界空間を作り出す...まさにストリートビューでGoogleがやってる行為は、世界中のパノラマ屋の『理想』なのです。しかし今までは、余りにも膨大な作業量が予想され、さらには悪用に大しての防護策が全く見えてこないことで、あくまでも“夢物語”としてしか語られることがありませんでした。
これが技術的に出来ることをGoogleは証明し、夢物語でなくしたことが、我々パノラマ屋にはとっても嬉しいことだったんです。
実は樋口さんがこの記事を書かれた当時、ボクはストリートビューの悪い部分は甘んじて受け止め、その上でニュートラルで居ようと思い、このブログでは余り書かないようにしていました。
しかし頻発を重ねる目に余るGoogleの行動に、さすがにボクも、堪忍袋の緒がブチブチ切れる音が聞こえるほどに溜まりかね、最近は自分の思いを吐露しはじめています。
しっかりと思いを伝えたい一心で、手を休めずに、思索に耽るに相応しい早朝に、一気に書き上げました。
それが伝わっているのかどうか、非常に不安でしたが、こうして樋口さんのご返事に、少し救われたような気がします。
「文章」って本当に難しいですね。日々精進也、でございます(笑
今後とも、いろいろとご教授くださいませ。
どうぞ宜敷くお願い申し上げます。
( 2009年2月26日 20:54 )
こんなのがすでに日本であったんですが、、、ご存知だったでしょうか??
LOCATION VIEW
https://www.locaview.com/index.aspx
あれ?以前はお試しで入れたんですが、アカウントを取得しなけりゃ入れなくなったみたいです。
Googleのよりもインターフェイスがよかったです。
( 2009年2月26日 22:12 )
>deluxe.さん江
わぁ...懐かしいなぁ<LOCATION VIEW
勿論、存じ上げてますよ。
サービスが始まってからすぐにアカウントを取得して、
ダウンロードできるAPIで、サンプル開発なんかもしましたよ(笑
最近ご無沙汰してますねぇ。
社員さんとも何度か連絡のやりとりをしていて、
いつか面白いことしましょう、という話で止まってるような(苦笑
GMSVの日本版がリリースされる前に、
日本で同じようなサービスをやった会社なんですよ。
画面のインターフェイスが独特で、ボク自身はちょっと馴染めませんでした。
APIもちょっと使いにくくて...。
ただココの親会社が地測会社なので、こういう情報の処理はお手の物でしょうね。
まだまだ健在のご様子なので、何かの機会に紹介することがあるかも...。
( 2009年2月27日 12:11 )
を!やっぱりご存知でしたか!というか開発にも関わっておられて!
ええと、釈迦に説法みたいになっちゃって、失礼いたしました〜。
もうにのみやさんにはかないませんよぉ〜〜。(笑)